ヘルメット ステッカーチューン - 文字の霊力 -

ZENITHのジェットヘルにEncient German Gothicでステッカーチューン。

ブラックレター体に属するこの書体の添付によって変哲のないヘルメットに俄かに立ち現れた妖気を、杉浦康平先生に倣って文字の霊力と呼ぼうか。

中世フランスの大開墾運動により都市にあぶれ出した農民たちの、森へのノスタルジーと崇高さへの希求を具現化したゴシック建築の、絡み合い増殖する尖塔アーチや飛梁の衝動をそのまま受け継いだかのようなブラックレター体。

その文字空間を埋めるように繁茂する装飾は、ゴート的異教のガーゴイルの咆哮と共に、SNELL規格を超克するだろう霊力の護符として、あの琵琶法師が失念した側頭部近辺の庇護を期待したいところだが、サクリファイスが魔除けと共に内包する神々への供物のベクトルが、ライダー自身に向かいかねない懸念もまた払拭しきれず、聖なるものとの有機的結合と無機物への還元という恍惚と不安にこそライディングの享楽があるとすれば、一方的な神強制は原理的な成立不可能性に乗り上げざるを得ない。

そしてこの霊力を湛えたオープンフェイスヘルメットを装着して乗り込む車種の造形は、円形を基調とした調和的なVespaであり、その造形哲学をゴシックとの対比からルネサンス古典主義美学になぞらえるのもアナガチといいたい。そもそもイタリアの会社が自社製品に「Primavera」の名を冠する際にボッティチェリを想起しないはずがないという一点において、この設定の妥当性が担保されていると言い切ることとする。

うららかな春の休日、籐編みの籠にサンドイッチを入れてピクニックに出かけるというVespaのプロモーションに見られる世俗的な快楽は、教会権威によってもたらされる死後の栄光よりも、現世の繁栄の永続を願う大金融ブルジョワジーパトロンとするルネサンス人文主義の系譜に属するものであり、Vespaが生まれた同時代にフォーカスすれば、直前まであった崇高さを旨とする全体主義体制からの解放という意味合いを、かつての衣装をもって呼び起こしたのかもしれない。

そんな人文的なバイクをゴシックなヘルメットでライディングしたからといってバロッキーな輝きが得られるというわけでもなく、夏限定のこのジェッペルチューンは本年より開始された沸騰時代のひと夏の淡い思い出として、可憐な胸に秘めておくこととしたい。

ベスパ ステムベアリング交換

ベスパプリマベーラのステムベアリングを交換。

購入から3年半、走行距離で11,000kmほど。

一年前の点検でステアリングの動きが渋くなっていると指摘があり、今回もうさすがに交換した方がいいということで交換。

費用はブレーキフルードの交換も含めて¥40,700。うち工賃が¥30,000。なかなかと唸らされるプライスだが、外装満載というか外装だけで構築されている特異なフルカウルSS(steel・scooter)の車体構成を鑑みるにそれも致し方なしという感慨を納得にコンバート。

肝心の交換の効果としては、運転が楽になった。

今になってみると以前はハンドルを押さえながら走行していたのだろう、意識しなくてもバイクまかせにできる領域が広がった感じで、手放しでもまっすぐな瞳を輝かせることが可能となり、横風の中でもハナウタ交じり。一時間に一度の休憩も二時間に一度に減少。マシンの精度を上げたことで、ヒトの労働を節約して我が休日の労働生産性は着実に向上を果たした。

それにしてもなぜこんなところがダメになったのか。フロントブレーキばかりを常用した結果、リアのスズメバチ・ダイナマイトなセクシーバックショットの押し出しを、フロントの片持ち細うで繁盛期に担わせすぎたのかもしれない。