映画・テレビ

「桜桃の味」アッバス・キアロスタミ

自殺志願の男は、しかし自身が死と生のどちらを選択するのか決定しきれず、その顛末の確認に他者を必要とする。 その為の相手を高額の報酬を持ってスカウトするが、単に経済的に貧窮しているというだけでは引き受けるものはおらず、スカウトされた側は降りか…

「ブラインド・マッサージ」ロウ・イエ

恋と革命の監督は、閉塞のシニシズムから閉塞の狂気へと向かう。目を閉じて得られる幸福は諦念なのか皮肉なのか。人は閉塞に対してシニシズムで高を括りつづけることはできない。否応もなく現実は迫り、取るに足らない些事が相対的に肥大してゆく。「主流社…

キアロスタミやばい

「トスカーナの贋作」と「ライク・サムワン・イン・ラブ」を見たけど、キアロスタミやばいっす。 2018年の現在、キアロスタミに興奮するとか、何か特殊な意味付けを捏造しなければ到底納得を確保しきれないほど今更感満載だが、自分はあらゆる事柄が今更なの…

「ケンとカズ」小路紘史

「ケンとカズ」小路紘史 全編を荒涼とした暴力感が支配する紛れもない傑作。 この監督はこれからも優れた作品を送り出すのだろうが、今後見ることのできるであろうものとは別種の、作家がその生涯に生み出し得る一回性の出来事をわれわれは目撃しているのか…

「SRサイタマノラッパー〜マイクの細道」

「SRサイタマノラッパー〜マイクの細道」が楽しみで毎週見ているけど、これがビシビシ来て仕方がない。 週末に、こういうドラマにビシビシ来られる中年男というのも無残な光景だけど(笑) 「サイタマノラッパー」は「リアルな大人」の世界の中の、しょぼい…

橋口亮輔

「原一男のニコ生「CINEMA塾」」で橋口亮輔のインタビューを見てから、すっかり橋口亮輔のファンになって映画を全部見た。本数が少ないのですぐ見れるけど。 「二十歳の微熱」と「ハッシュ」は昔見たことがあって面白いとは思ったものの、その後特に気にする…

「この世界の片隅に」

「この世界の片隅に」 目の前に立ち現れる状況に対して「困ったねぇ」とつぶやきながら笑顔で受け入れる、のんびりとして時流からどこかずれる北條すずの造形に、観客はイノセントな解放と、かけがえのなさを見出す。 兵役につく幼馴染は、すずに「普通」で…

「ほとりの朔子」を見たら画面サイズが4:3だったので、何か設定が間違っているんじゃないかと色々と設定を見て回った。 意図してそういう画面サイズで撮られていたようだけど、これが映画館やギャラリーで見たのなら、そうしているんだなというところが、今…

「マクベス」ロマン・ポランスキー DVD

ポランスキーの「マクベス」がDVDになっていたので購入。 この作品は30年ほど前に大阪でやっていた「CINEMAだいすき」というTVで放送されたのを観た。人気があったらしく再放送された時にVHSで録画して、それ以来何回となく見返してきた。それをようやく、本…

「ブリジット・ジョーンズの日記」を観る。こういうラブコメは好きで、ちょくちょく観る。日本語吹き替えで。 映画前半、調子のいいイケメン編集長と出来るのを見ていて、なんでこんな奴がいいんだと半ば本気で不満を感じたり(笑) 観客のカタルシスのため…

VILLAGE ON THE VILLAGE

仕事帰りに「VILLAGE ON THE VILLAGE」を見てきた。 7月に撮ったこのお店が映画にも出てたね。 偶然に単なるという語を加えて笑ってはいけない。 ネットのブログサービス上に現れたスチール写真と東中野のスクリーンに映し出された映像の一致は、異なる指示…

「僕らは歩く、ただそれだけ」廣木隆一

「僕らは歩く、ただそれだけ」廣木隆一不安からちょっとしたエアポケットにいるらしいキャリアの浅いカメラマンであるみゆきは、訪れた故郷でかつて自分が住んでいた一軒家に現在住んでいる女子高生と出会う。 田舎暮らしに辟易している女子高生は、希望を実…

「0.5ミリ」-「ヒミズ」

「0.5ミリ」で受けたショックから安藤サクラがらみで近年の日本映画を色々と見た。 安藤サクラ出演の映画だけ見ていたわけでもないけど、ヒューマンドラマが多くて気分が日本的自然主義な風土に染まっていたが「ヒミズ」を見てスッキリした。 しかし「ヒミズ…

「僕らは歩く、ただそれだけ」廣木隆一

「僕らは歩く、ただそれだけ」廣木隆一 いい作品じゃないですか、これ。サクラちゃんの魅力も全開。 どういう監督なのかなと調べたらこれがベテランなのにさらに驚いた。表層から深入りしない今風のヒューマンドラマで、台詞回しや挿入歌の選択などからも、…

「0.5ミリ」安藤桃子

「0.5ミリ」安藤桃子 自らを「未来がない」と規定する山岸サワは、老人の元で住み込み家政婦として生活するわけだが、その老人たちは経済的に豊かではあるものの家庭は機能不全に陥っており、ヘルパーの技術でもってサワはその隙間に入り込む。 家庭内労働を…

安藤サクラの映画を絶賛物色中。 みんなシンゴジラと言ってる中どうかとも思うけど仕方がない 笑 今日は「百円の恋」「ケンタとジュンとカヨチャンの国」「白河夜船」を鑑賞。 「家路」「今日子と修一の場合」は先週見た。「かぞくのくに」と「サイタマノラ…

0.5ミリ

一週間前に観た「0.5ミリ」にやられたショックが抜けない。 たまにこういうショックに見舞われることがあるけど映画から受ける衝撃の瞬間風速は他の表現に対して群を抜いている。 しばらくたつとこういう衝撃は薄れて行って好きな映画の引き出しに収まるのだ…

「神々のたそがれ」アレクセイ・ゲルマン

「神々のたそがれ」アレクセイ・ゲルマン 最も最悪な世界が、最も高貴に描き出される。醜こそが美ということではなく、最悪さが最悪のまま摂理のように見えてくるという意味で高貴である。 この映画を見たところで何か新しい知見が得られるわけでもなく、時…

おママ対抗歌合戦

おママ対抗歌合戦 年明け早々こんなもん見ちゃった w

「ホーリー・モーターズ」レオス・カラックス

「ホーリー・モーターズ」レオス・カラックス スタイリッシュな疾走やグロテスクな怪人をフェイクとして演じながら、この人にとってのリアリティは、その合間に現れる取りつく島もないような孤絶感だけなんじゃないかと思えてくる。 それは自分の関心に引き…

「都会のアリス」ヴィム・ヴェンダース

「都会のアリス」ヴィム・ヴェンダース ちょっと遅めの夏休み。世間が働いている中、まったりとした午後に見るヴェンダースは心地よかった。 ポラロイドカメラでかろうじて確認らしき作業を繰り替えす男と、母親に置き去りにされた少女の関係は、大人と子供…

「孤独のグルメ」

「孤独のグルメ」 少し前に知って、見たら面白かったので時々DVDを借りて見てる。 これを見て「孤独のグルメ」で検索して他の人が書いていることを読む。というのが最近の一番の楽しみになってる(笑)

「ハンナ・アーレント」マルガレーテ・フォン・トロッタ

「ハンナ・アーレント」 マルガレーテ・フォン・トロッタ 「イェルサレムのアイヒマン」発表後のバッシングや各種の反応が描かれる。 「ヒステリック」な反発を示すユダヤ人や、熱狂的な喝采を送る学生などの他に、アーレントの旧友による批判がある。妥協を…

必殺橋掛人「OPナレーション」

必殺橋掛人「OPナレーション」 youtubeで昔のTVを何となく見ていてぐっと掴まれた。 BGMはともかく、「さし上げやしょう」がきた。

映画「サウダーヂ」への批判として、あらゆる問題を詰め込みすぎて破綻しているというものがある。また、前半の地方都市の現実を描く描写の素晴らしさに対して、後半の物語の展開を安易で強引だとする批判もある。 しかし、こういった映画的完成度の重視や、…

ホン・サンス

ホン・サンスの「浜辺の女」「アバンチュールはパリで」。軽妙なスタイルだけど、絶妙に地に足のついた感じに感心する。 描かれるモチーフは既視感に満ちていてステレオタイプでもあるが、この古さがリアリティを担保しているひとつの鍵なのだろう。出てくる…

「マクベス」 ロマン・ポランスキー

ポランスキーの個人史の文脈以外は特に語られることもない映画で、また、語られる文脈もないだろうけど、そんなことは差し置いた、まごうかたなき傑作。 アメリカンニューシネマともシンクロするリアリズムと、演劇的なアレゴリー。古典の持つ射程の長さ。 …

「ケン・ラッセルのサロメ」

www.youtube.com 「ケン・ラッセルのサロメ」が好きで、何年か前に1万円ほどでDVDを買った。 最初に見たのは87年頃だろうか、この頃はよく深夜のTVでアート系の映画をやっていた。 確か関西テレビでコマーシャルなしで放送していたように思うけど、それで見…

NHKの子供番組のセンスの良さは尋常じゃないね。子役も変なこましゃくれたのじゃないし。

「ニーチェの馬」タル・ベーラ

「ニーチェの馬」タル・ベーラ 美しい階調を湛えるBlack & Whiteは終始破綻を見せず、物語への奉仕とは一線を画した描写は、これ以上続けば観客の関心が離れる手前の絶妙なタイミングで切り替わる。 引き返してきた荷車から下ろされる荷物は、場面の説明記号…