「船、山にのぼる」本田孝義

ダム建設に伴う地域の再開発に携わる灰塚アースワークプロジェクトの活動のひとつとして行われた、水没する集落から伐り出された木を使って船を作り、それを山の上に運ぶというアートプロジェクトを追ったドキュメンタリー。
アートのストレンジャー振りが、ダムに沈むそこの住人にとっても、時に「理屈抜きに面白い」イベントとして機能し得るらしい。その「面白さ」は、この映画が時間を掛けて描き出す、住人や自治体との丁寧で粘り強い関わりから生まれるものであり、そして住人の思いと合致した、藤森照信いうところの「ノアの方舟」として、含意ある荒唐無稽さとしてのアレゴリーが生むそれである。