アマチュアの世界

岡田暁生の「音楽の聴き方」は、近代音楽が「すること(作曲家/演奏家)」「享受すること(聴衆)」「語ること(批評家)」の分業体制をロマン派と音楽産業の共犯関係によって確立したことへの抵抗として『真摯なる「アマチュアの領分」』が必要だとする。
この本の趣旨とはちょっとずれるけど、写真の世界はアマチュアしかいない世界といえそうに思う。少なくとも日本の写真界では。他のジャンルではトップアーティストというのは概ね、作品としての完成度と商品としての価値が高度にアウフヘーベンされているものとして、たとえそれが理念上のものであれ想定されていて、そしてそれはある程度実現されているといっていい。それに対し、写真の世界では「プロカメラマン」は、雑誌や広告の写真パートを受け持つ職種で、「作品」との関係は想定されていない。それは「芸術家」というより「職人」に近い。一方、膨大に存在するアマチュアカメラマンは全て「芸術家」であり、「プロカメラマン」を目指すものは誰一人いない。