「冷たい熱帯魚」園子温

強い引力を持つ力強い描写はしかし、同一フェーズの敷地内を延々と徘徊する。
例えば「青春の殺人者」という親殺しを扱った映画では、登場人物の心理の生成変化が次々と移り変わって行く様子が克明に描かれるが、この映画ではそういった変化はなく、極めて強く状況設定を限定した上で同語反復をひたすら繰り返す。
それがどれほどインパクトがあり、希少性があっても、外部を持たない自閉した露悪趣味は端的に唾棄すべきもの。
重要なことは単一化されたイメージから抜け出ることで、人畜無害な単一さのアンチテーゼとして人畜有害な単一さを持ってきても、六道輪廻のダイヤルを回転さすだけで意味が無い。