惰眠

週のピークは言わずと知れた土曜の午前に存在する。
土曜の朝も目が覚める。しかしWeekdayとの違いはその後にさらなる睡眠が控えている事である。
二度寝であり、惰眠である。それは通常怠惰にカテゴライズされる生活態度とされている。
だが、考えてみてほしい。二度寝はただの怠惰が成し得る行為だろうか。確かに肉体の表層的部位は怠惰といえる。しかし肉体の深層部位の活動は止む事は無く、胃に必要十分な食料は外部からの補充を必要とする。
つまり二度寝を十全に堪能するには、あらかじめ計画された食料安全保障が欠かせないのである。
金曜の夜、月曜日から働き詰めに働き、帰路を急がんとする肉体に意識的な変更命令を下してコンビニエンスストアに向かう。購入物品のカテゴリーは決定されている。糖質系のパンを二つ。あんぱんにクリームinのフランスパン。そして蛋白質系のソーセージドックを一つ。糖質系だけでは土曜の午前を有為なもにはできない。どうしても蛋白質は必要である。
これだけのロジスティクスをして初めて「惰眠」は「貪る」ことが可能となるのである。
そして迎えた土曜の午前。ゆるやかに覚醒をはじめた意識がカーテンの隙間から漏れる午前のさわやかな日光の存在を感じる。今一度掛け布団を頭から掛け直して蒲団の中に潜り込む。何も憂うる必要のない、ここから遥か未来にまで続く悠久の時間。この瞬間の為にこの一週間は存在した。そして、それをさらに確実なものとする食料の確保。私は昨晩吟味し計画したアイテムのひとつ、サンクスオリジナルクリームinフランスパン「ミルククリームフランス」を迎え入れようと手を差し伸べた。
だがそこに存在するはずのFrenchが見当たらない。昨夜私は確かにコンビニエンスストアのレジ係の男に料金を支払った。キャッシュで。あの男の仕業か。いや、この至高の時間をそのようなnegative thinkingで穢してはならない。どこかこの邸宅の別の場所に存在しているのだろう。電気冷蔵庫の上辺りか、あり得る話だ。まあよい、アイテムはまだあと二つある。この予防も兼ねた冗長化措置と適切なSelf controlの結果、今週の土曜も至福と呼ぶにふさわしいものとなった。
ただ気がかりなのはミルククリームフランスの行方が未だ不明な点である。