超越性

一方で超越へのナイーブな没入があり、一方で超越への過剰な拒否がある。
超越へのナイーブな没入は、異端審問を生みファシズムへと至る。超越への過剰な拒否反応は、物事のプライオリティをなくし現状追認に陥る。
超越的な価値の正当性をいかに叫ぼうとも、多様であらざるを得ない現実は如何ともしがたく、超越的な価値をいかに否認しようとも、超越への欲望を抹消することはできない。
つまり双方の態度はともに合理的とはいえない。それはイデオロギー闘争であり、それぞれのサークル内での互酬関係の構築以外の意味はない。
超越的なものへの動機と、多様であるしかない現実の双方を視野に入れるという、極当たり前の態度が前提でなければならない。