写生という行為

最近写生をしているが、自分は今まで現物を見て描くという事をしていなかったことに気付いた。写真を見て書き写すのと違い、写生では、物の形が掴みづらく、物には輪郭が存在しないことを知らされる。輪郭は作り出すものなんだと思う。また、写生とは物を正確に描き写すことではなく、正確に見えるように描き出すことでもある。対象を見ている時間と、紙の上で筆を走らせている時間はまったく別物で、そこには何も関連が無い。近くにあるものを写生するときなどは、右目で見える景色と左目で見える景色では、違いが生まれ、描くときにはそれを選択しなければならない。

 描くという行為は、見るという行為とは関係が無く、身体の運動とその軌跡をとどめることが出来る物理的な条件だけが必要なのだろう。物を見て描く写生とは、もっと社会的、文化的行為で、描くという行為を社会的ならしめるものが写生といえる。