カメラは工業技術の進展と共に生まれ、工業技術の高度化がカメラの性能を向上させてきた

カメラは工業技術の進展と共に生まれ、工業技術の高度化がカメラの性能を向上させてきた。
資本主義経済の進展は労働の質を変え、人々は一次産業から工場労働、サービス業、ホワイトカラーへと労働形態を変えてきた。
屋外で活動する、生活と労働が一体化した行動様式は、写真が最も得意とする被写体であるにも関わらず、カメラという装置はその発生の起源からそれらが失われてゆく社会構造でしか生まれ得なかった。
カメラの高度化は屋外での生活という格好の被写体を失うこととパラレルにしかあり得なかった。
逆に言えばカメラはその存在自体が、失われ行くノスタルジーを記録するために存在したようにさえ思えてくる。
しかし、産業の高度化は別の被写体も用意した。戦場である。
工業技術の粋を尽くした破壊装置は、カメラの前に一大パノラマを提供した。