私写真と#Me Too

荒木経惟のモデルからの告発に関して、何人かの評論家や研究者が写真家とモデルの雇用関係に問題を限定して、表現の質を分離しようとしているが、これは明らかに表現の質に関わっている。

自他未分化の混沌に、根源性や本来性を見出そうとするロマン主義的な表現手法の一バリエーションである「私写真」が、雇用関係を隠蔽し異議を封殺する機能を果たした。

仕事と生活、商品と作品、欲望の投影と他者の存在、それらを意図的に混濁させ、被雇用者に強要と自発性の区別の判断基準を喪失させることは「私写真」の有り様そのものだろう。

未分化が根源的なものとして商品価値を持つ中で、封殺は利害関係者を動員し強化される。