お寺の「美術館」

興福寺の阿修羅像や中尊寺金色堂は博物館のような建物に収められていた興ざめだが、しかしやはり博物館や美術館にはない信仰が垣間見える。
訪れる人の多くは地元の観光客のようで、休日のちょっとしてレクリエーションで来ているのだろう。
若いカップルは堂内を巡りながら女のおしりを触り、それを見ていた二人連れのおばさんは台無しや、と苦笑いする。
家族連れで来ていた中学生くらいの女の子は阿修羅像を見て西川きよしに似ているという。
そんな中、金色堂の博物館では「展示物」を遮るガラス窓の前に取って付けられたような賽銭箱にお金を入れて熱心に拝んでいるおばさんがいたり、
東金堂を退屈そうに見物していた二十歳くらいの女の子は、しかし最後に一瞬手を合わせてお堂を出て行く。
美術館が信仰の代替を果たしていても、お寺にある「美術館」とはまた位相が違う。