サッドバケイション 青山真治

ポカンとしてしまった。この映画がどこを狙っているのか掴めないまま上映時間が過ぎていった。面白くないわけではない。それぞれのシーンには一切飽きることが無く惹きつけられ、何の苦痛も感じることなく最後まで見終わった。では何か名付けようの無い魅力に溢れているかと言えばそうではない。そう奇異なものがあるわけではなく、シリアスなのかコメディなのか、アットホームドラマなのか、確定しないままになっている。簡単に言えばバランスの取れていない映画と言えるのだろうけど、作り手の意図はもう少し微妙なラインを狙っていたのであろう。

中上健二のパロディ化、ファンタジー化、ヒューマンドラマ化とも言えるのだろうが、しかし、ことさら中上の名前を出す必要も無く、もっと素朴に相互扶助的な共同体への希求を見ればいいのかもしれない。というよりも、そういうものとして機能する側面が高い映画であるような気がする。反グローバリズム、反新保守主義を掲げ、色々問題も無いわけではないが、かつての町の商店街は良かったと言っている様にも見える。