ホン・サンス

ホン・サンスの「浜辺の女」「アバンチュールはパリで」。

軽妙なスタイルだけど、絶妙に地に足のついた感じに感心する。
描かれるモチーフは既視感に満ちていてステレオタイプでもあるが、この古さがリアリティを担保しているひとつの鍵なのだろう。

出てくる女優はみんな可愛くて色っぽい。しかしどれも同じように見える。一人の男に恋愛で関係する女達なので同じ原型を持っているとも言えるし、男性中心主義の都合の良さの現れとも言える。
この二作の主人公はどれも優しくて無責任な感じの男で、男のいい加減さへの非難を口実として担保することで、複数の女性とのパラダイスを夢見るという、これまたもう随分以前に絶滅危惧種に指定されたような世界が展開される。
そういった色々と気になるところもあるけど、これらの映画の描写が持つ安易なスタイルに落とし込むことを拒む力に魅せられ引き込まれる。

日本映画で同じような映画を撮れば、もっとポップなエンターテイメント色の強いものになるか、軽妙でコミカルであったとしてもアンダーグラウンド感の漂うB級映画になるような気がする。

これらの映画の持つ古さとある種のリアリティを切り離して、ホン・サンス映画の可能性の中心を抽出してみたいような誘惑にかられるが、そこを切り離してしまえば上記で想定した日本映画のように似て非なるものになるのかもしれない。
そこは理念や理論とは違う芸術の持つ身も蓋のなさなのかもしれない。