「雪国」川端康成

以前に読んだときは、いい気なものだと、東京の金持ちの男が田舎の芸者を愛でる視線を唾棄して読み捨てたが、何気なく読み返した今回は沁みた。
スキー客あたりを目当てに働く若い女に、片田舎で「無意味」な生を、儚くも甲斐甲斐しく輝かせる閉塞の美を見いだすいやらしい視線も、ここまで洗練されれば圧巻と言うしか無い。
田舎の芸者にとっては希望と映るだろう、東京の高等遊民が見た若い女の姿などに何があるのかと思うが、そういう装置から垣間見える美に慰撫される領域というものも存在する。閉塞を美によって救済するという契機が消滅するわけでもない。
こういうものに華々しい賞はふさわしくない。一種の変態作家として心に留めておく類いのものだろう。