ロン・ミュエック-金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館ロン・ミュエック展を鑑賞。
隅々にまで徹底的に追及された写実を異常なスケールで実現した人体像の前に立てば、自らが纏っている社会的な制約から離れることなく、それらと向き合うことは難しい。
そのリアリズムはグロテスクな露悪趣味に近づきながらも、それに陥っておらず、シニシズムを回避しえている。
大変ユニークな直球勝負の作品ではあるが、事前にTVや雑誌などで見ていたときに感じたものと、実物を見たときの感覚に質的な違いを持つような大きなズレは感じられなかった。
モダンアート以前の美術に接するときにしばしば、今回と同様の感覚を覚えることがある。モダンアート以降には複製技術への抵抗がどこか塗り込められているのか、実物に拠らなければ得られないものの領域が、それ以前のものに比べ大きいように感じるが、ロン・ミュエックの作品には、それらモダンアートの拠ってたつ地盤を共有しないものがあるのかもしれない、というような気もしないでもないような感じ。

それにしても美術館は大盛況だった。ロン・ミュエックの他、日比野克彦、サイトウ・マコトといった集客力のある面子のせいもあるんだろうけど、まず現代美術に興味を持ちそうにない、若いカップルや、小さな子供のいる家族連れ、家族に付いて来たのだろう歩くのも大変そうな、おばあぁちゃんも来ていた。地元の人がどれだけいて、観光客がどれだけいたのか分からないけど、遊興施設の不足なんかの条件もあるんだろう。あるいは、地元のマスコミが繰り返す連日の報道ぶりに、何となく行ってみたい/行かなくてはいけないという気分が発動する磁場が働く、なんんてこともあったりするのだろうか。