贈与 - 処分場なき廃棄物 -

共同体は崩壊したと言われる。たしかに一般的な意味での共同体は無くなったのだろう。それは崩壊して拡散し、国家大に充満して気体のような広がりの中に濃淡があるだけのように見える。共同体は消え、共同性だけが残っていると言えるのかもしれない。
市場型の交換関係だけが人と人の関係を規定する。と同時にそこでは鎖から放たれた贈与が突風のように瞬間的な猛威を振るう。複雑に絡み合った熱帯雨林のような共同体の中で、贈与の力は様々なベクトルを与えられ、相殺し、補完しながらコントロールされていた。しかし焼き払われたモノカルチャーの大規模農場の上で、贈与は処分場なき廃棄物を生み出す。廃棄物は市場で売買され、“癒さ”れ、「権利」のブラックホールに投げ入れられる。
人は贈与なき世界に生存することはできない。だが、贈与の実存的エコシステムは見出し得ていない。