菊地成孔が、気付いたら、それまでの人生のすべてが、高校の授業中のうたた寝で見た夢だったとしたら、それは天国か地獄か、
というようなことを言っていて、それが、あまりにも鮮烈なイメージで忘れられない。
高校の授業中のうたた寝から目覚めた時のぼんやりとした白けた退屈な風景に、いつまでも永劫回帰するとしたら、それは、どっと疲弊が訪れる絶望的な光景であるようにも思えるし、どこか、安堵の中に舞い戻る風景のような気もする。
義務教育でもないのに義務教育のような拘束の中にいて、そこへの適応の義務感から相対的な自立も併せ持つ年齢と制度のミスマッチは、戦後の復興期以降に生まれた日本人に特異な原体験を刻んでいるのかもしれない。