映画・テレビ

追悼。アンゲロプロス。

「冷たい熱帯魚」園子温

強い引力を持つ力強い描写はしかし、同一フェーズの敷地内を延々と徘徊する。 例えば「青春の殺人者」という親殺しを扱った映画では、登場人物の心理の生成変化が次々と移り変わって行く様子が克明に描かれるが、この映画ではそういった変化はなく、極めて強…

「サウダーヂ」

社会の悪循環の輪廻を経巡る映画は数々あるが、これほど多様な人物と、それぞれが寄って立つ経済的基盤を重層的に描き込んだものはそうはない。土方、ヒップホップミュージシャン、キャバクラ嬢、デリヘル経営者、外国人労働者、イベントプロモーターもどき…

美しいニュース映像

テレビニュースを見ていると、たまに映画のような美しい映像が流れてくることがある。こういう美しさは注意して取り扱わなければならない。昔、ボスニアの内戦を伝えるニュースで、小ぶりで可愛らしい住宅のある、欧州の美しい田舎に降り積もる雪の中を、小…

テレ東はニュースやってないね。さすがは湾岸戦争でもムーミンを流した局。本当の理由がどこにあるのかは知らないけど、コレ大事。

「船、山にのぼる」本田孝義

ダム建設に伴う地域の再開発に携わる灰塚アースワークプロジェクトの活動のひとつとして行われた、水没する集落から伐り出された木を使って船を作り、それを山の上に運ぶというアートプロジェクトを追ったドキュメンタリー。 アートのストレンジャー振りが、…

「ゴーストキス」いまおかしんじ

こういうものを見ると、重要なことは必然なのだと思う。いまおか的な世界にとっての必然性が、それだけに導かれながら、余計なものに惑わされること無く。 例えば「ある愛の詩」という映画なんかも、今となっては特にどうということもない話だけど、これを必…

若くない女優

日本映画が焦点を合わせて描く女性は、ほぼ若い年齢層で、そこで引き出される微細さに比べ中年以降の女優は若い子の引き立て役としてステレオタイプの演技に終始する。ある種のキワモノとして承認されている「個性派女優」を除いて。この構造のもと、引き立…

「たまの映画」

テアトル新宿の21時からのレイトショーを観に行った。満席。若い人が8割、中年が2割といったところだろうか。だいたいの印象だけど。もう少し同年代がいるかとも思ったけど、連休最終日のレイトショーに行くおっさんが、そういるわけもない。 たまは昔良く…

「ゴダール・ソシアリズム」

あの作家も若い頃はトガッたものを撮っていたんだよね、というものを後期高齢者が。末恐ろしいジジー。 本当は未知の訳のわからなさが末を恐ろしく感じさせるというよりは、名人芸ともいえそうにも思うが、この種の解体は上流階級の欧州人の責務でもあって、…

「罪 tsumi」いまおかしんじ

自分を生きることとは、所与の条件の中で選択した生存の形態が強いるローカライズを引き受けつつ、すでに履行され尽くした生の形式を反復すること。“新しさ”も“オリジナリティ”も全ては、その結果でしかない。効果も計算も、ローカルな生存テクニックとして…

「珈琲時光」侯孝賢

この映画が好きで時々見返すのだけど、いつもエンディングの歌で一気に込み上げてくる。とくに中国語が出てくると完全にトメドがなくなる。 “関係の稀薄な現代日本”を描いたものは数在れど、この映画の特有のスタンスはやはりツーリストのものなのだろう。「…

「mother」

田中裕子ファンになって一年。初のリアルタイム裕子。 若い頃の田中裕子は面白いけど、笑顔は年を重ねた今のほうが魅力的。 「サッドヴァケイション」の石田えりのような狂気の笑顔も見てみたい気もする。 石田えりとは「嵐が丘」で一緒だったな。たった一年…

三島由紀夫が映画は最も安全な芸術であるといったり、四方田犬彦が映画は可能性としてしか語られてこなかったというようなことをいったりしているのことに対して、その理由を掘り下げてみようとすると分からなくなるけど、直感的にはよく分かる。ツボに入っ…

「ほえる犬は噛まない」ポンジュノ

いやー、びっくりした。コレだよコレ。これでいいんだよ。別にコミカルである必要は無い。アクションが必要だという訳でもない。ストーリーやテーマなどいらないというつもりもない。面白ければいい、という言い方は誤解を招きそうだけど、しかし結局は、面…

「グラン・トリノ」クリント・イーストウッド

年老いて時代に抵抗する白人と、伝統を保持する移民の東洋人家族との関係の成立を、人権などとは、まったく関係のないところで見る。 移民の女の子は、イーストウッド演じる老人に、あなたが自分の父親であったらと言い、自分の父親は抑圧的な古い人間である…

「空を飛ぶ夢」アレハンドロ・アメナバール

こういうものが映画の中心であるべき。娯楽性を確保しながら、社会派として既成の価値に疑問を投げかける。煽情性を排し、テンポを崩さず、滑らかで厚みをもった演出や映像。存在感のある登場人物達は、しなやかで安っぽさを感じさせず、エンターテイナーと…

米ワーナーが日本映画に本腰

米ワーナーが日本映画に本腰 。ハリウッドが日本映画を手がけるのか。したたかだね。映画産業のことは知らないけど、他の国の映画会社も同じようなことをしているんでしょうか。出資なんかはあるけど。儲かることならなんでもするということであっても、そう…

「想い出づくり」

田中裕子出演の映画やドラマは、めぼしいものは大体見てしまい、他に見るものがなくなってきたので、エイヤッとkiyomizu diveを敢行。81年製作のTVドラマ「想い出づくり」のDVD BOXを購入。この田中裕子はいい。スレたような、可愛いような、ガラの悪いよう…

「美代子阿佐ヶ谷気分」

林静一のトークショーがあるのを知ったので、ポレポレ東中野で「美代子阿佐ヶ谷気分」を見てきた。林は、この映画の原作となった漫画の作者、安部愼一のような地方出身者にとって東京は舞台であり、そこでの生活は演劇としてあるのではないか、自分のような…

「選挙」想田和弘

2005年の川崎市市議会議員補欠選挙の自民党公認の新人候補、山内和彦の選挙戦を描いたドキュメンタリー映画。自民党公認候補として、選挙のプロ達の運営する組織のパーツとして、候補者本人が様々な違和感を抱え込みながらも、選挙運動の力学の中で駆動して…

「佐藤宏」いまおかしんじ

「かえるのうた」のDVDに収録されている"特典映像”。「おじさん天国」のイカ釣りのおまけ映像もそうだけど、本編は、これらおまけの理解を促進するためのプロローグのように見えてくる。まぁ、それは言いすぎだけど、DVDの体験としては、そうなってしまう。…

「たまもの」いまおかしんじ

「伝説の女優」林由美香という触れ込みに興味を持って「たまもの」鑑賞。面白い。女優も面白いし、映画も面白い。いまおかしんじは、自分と同年の1965年生まれらしい。今の40代から少し上くらいの世代には、この種のとぼけたジャンクな寓意を面白がる傾向が…

「二十四の瞳」で思い出した先生

「二十四の瞳」の映画を見ていて、小学生の頃の女性の先生を思い出した。その先生は1年のときの担任だった人で、自分が6年になったときに、音楽の担当教師として再会した。6年のクラスには、もうひとり1年で同級生だった男の生徒がおり、その先生は自分と、…

「二十四の瞳」田中裕子版

田中裕子目当てで「二十四の瞳」のリメイク版を見る。TVドラマの向田邦子スペシャルのような、上品なだけの面白味の少ない演技ではあったけど、向田スペシャルよりは良かった。それでも、それなりに楽しめるのは裕子愛の賜物。しかし、先生には見えないなぁ…

「残菊物語」溝口健二

これも「二十四の瞳」同様、この映画を面白いと感じる、その力の出所が分からない。「ワンシーンワンカット」や、「美しい映像」や、「完璧な構図」もあるだろう。ほとんど舞台のような演技が持つ、舞台演劇の力に拠るところも大きいだろう。かつて劇映画と…

「二十四の瞳」木下恵介

この映画が面白いのは何故だろう。何が、この映画の力なんだ?

「竹山ひとり旅」新藤兼人

全盲に近い三味線弾きが、貧困と蔑視の中で寒村の家々をめぐり、角付けをしながら、その日暮らしを送らざるを得ない様子を描いたこの映画は、重く救いの見えない題材に物語上の慰撫を施すことを拒絶するかわりに、ユーモアでそれに対峙する。朴訥で人懐こく…

男優の時代

たぶん。もう、ここ十数年になるだろうか、現代日本映画の中堅〜若手の男優には、複雑なニュアンスを表現できて、出てくるだけでビビッドに響いてくる俳優が多い。それらはアンチヒーロー型のそれであって、韓流スターのような古典美を体現しているわけでは…

なぜか中期 ー転がるほどに丸いお月さん見にー

陽水の中期のアルバムに、またハマっている。20代の頃よく陽水を聴いていたが、その後は関心が薄くなってiPodのシャッフル再生で流れてくれば聴くというくらいだったが、ここに来てまた陽水浸けの様相を呈してきた。中期の陽水というカテゴライズが一般的に…